テスラのオートパイロットは完全自動運転ではありません

テスラのオートパイロットは完全自動運転ではありません

台湾の高速道路で起きたモデル3の事故動画が話題になっているので、なぜこうなったのか。

まずは事故動画から

見事に激突していますね。

この動画を見て「完全自動運転中のテスラが激突した」と思う方が大半だと思います。ただ、それは誤りですそもそも完全自動運転の機能は提供しておらず、現在の法律では完全自動運転に相当する自動運転レベル5の自動車は走らすことはできません。オートパイロットはあくまで運転補助、自動運転レベル2に相当する機能で、10秒ちょっとでハンドル操作を車が求めてきます。誤った認識をして欲しくないため、記事にまとめます。なお、この事故はテスラが調査中のため、推測となります。調査後に異なる部分がありましたら更新します。

動画の解説

事故直前にトレーラの運転手らしき人が静止するように手を振って手を振っていますが、これは人と車両との距離があるのと正面に立っていないので、この記事ではとりあえずスルーします。この事故のドライバーはオートパイロットを使用していると主張していました。そしてオートパイロットで走行中のモデル3が横転しているトレーラの直前に白い煙を上げてブレーキをしていますね。これは恐らくオートパイロットによる緊急ブレーキが作動していてテスラマニュアルではこのように記載されています。

自動緊急ブレーキ

時速(56km)またはそれ以上で走行している場合、自動ブレーキが走行速度を時速(50km)まで減速させた後にブレーキが解除されます。例えば、自動緊急ブレーキは、時速90kmで走行している時に作動し、走行速度が時速40km以下まで減速すると解除されます。

自動緊急ブレーキは以下の状況でブレーキをかけたり、その反対にブレーキをかけることを防ぎます。

・ドライバーが急ハンドルを切った場合
・自動緊急ブレーキがブレーキをかけている間、ブレーキペダルを踏んで離した場合
・自動緊急ブレーキがブレーキを作動させている間は加速します
・車両、オートバイ、自転車、または歩行者がもはや前方に検出されなくなった場合

Model 3 Owner’s Manual

緊急ブレーキ作動中はこのような警告が表示されます。

マニュアルが少し難解に見えますが、つまり
・自動緊急ブレーキは完全停止しないということ
・自動緊急ブレーキ中にハンドルを切る、ブレーキを踏む、アクセルを踏むと緊急ブレーキは解除される

ということがわかります。

色んなシチュエーションが考えられますが、
・緊急ブレーキ作動に動揺⇒緊急ブレーキ中にブレーキを踏んで緊急ブレーキが解除⇒ドライバーのブレーキが甘かった⇒衝突
実際の事故で何があったか、その後の調査で明らかになってくると思いますが、このようなシチュエーションでも事故は起こり得ると考えます。

なぜ完全停止しないのか?

緊急ブレーキは正面衝突の衝撃だけを緩和するように設計されているためです。また、急ブレーキによって完全停止、その後の追突を避けるためではないかと思われます。

オートパイロットが優れている故の誤った認識

横転したトラックの100メートル後方に、ドライバーに衝突を警告する標識があったそうです。そしてドライバーはシステムがその標識を検知すると思ったそうです。オートパイロットは非常に優れていて、正直トップクラスです。しかし、オートパイロットが全てやれるという認識は持たないほうが良いです。システムに頼って直前になってマニュアルに切り替えても、60mph(96.5km)の速度で走っている場合、静止するためには34.4m必要です。

冒頭でもお伝えした通り、オートパイロットは運転補助機能であるため、人間が主体です。過信は禁物です。ちなみにオートパイロットのオートステアリングの項目にはこのように書いてあります。

注:オートステアリングはベータ版の機能です。
(中略)
警告:オートステアリングはハンズフリーの機能ではありません。使用中も常にハンドルを握っておいてください。
警告:オートステアリングは十分に注意力の働くドライバーが高速道路などのアクセスの制限された道路を走る場合に限って使用することを前提としています。オートステアリングを使用する時は、ハンドルを握り、道路条件や周囲の車両に十分に注意を払ってください。
市街地、道路工事のある区間、自転車または歩行者がいる可能性のある地域ではオートステアリングを使用しないでください。適切な運転経路を決定する際に、オートステアリングに依存しないようにしてください。常に即座に対応できるようにしてください。これらの指示に従わない場合、損傷、重症、または死亡の原因となる可能性があります。

Model 3 Owner’s Manual

オートパイロットで回避できる事故

テスラがクオーター毎にテスラ車の事故や火災のレポートをテスラ安全性レポートで公開しています。2020年Q1で登録されたレポートでは、オートパイロット中による事故は468万マイルに1回発生している。参考にNHTSAの最新データによると、米国内の全車で47.9万マイルに1回事故が起きています。オートパイロットがハイウェイで使われることが多いので正確に比較できませんが、マニュアルで運転するよりも事故率を減らせています。上述のように運転者が主体で運転しますが、オートパイロットを適切に使用することでヒューマンエラーを回避したり、事故減少に繋がります。

皆さん安全運転でいきましょう!
では、次回のブログでお会いしましょう。

(おまけ)

参考記事:
https://www.motortrend.com/news/tesla-model-3-crash-taiwan-autopilot-accident/
https://www.gizmodo.jp/2020/06/tesla-accident.html?cx_click=pc_ranking
https://driving.ca/tesla/auto-news/news/tesla-model-3-presumed-to-be-on-autopilot-plows-into-overturned-truck
https://www.tesla.com/jp/VehicleSafetyReport

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